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その瞬間まで…

  青かったはずの星で、太陽が牙を剥く。 風は熱を帯びた刃となり、海は煮えたぎる釜となる。 緑の肺は悲鳴とともに黒い炭へと変わり、 命の記憶が、空高く煙となって消えていく。 それでも、彼らは歩き続ける。 冷え切った部屋の中で、四角い画面の幻影に溺れ、 「今日も暑いね」と、空虚な笑みを交わしながら。 足元で大地がひび割れ、血を流しているというのに、 誰一人、その視線を下へと向けようとはしない。 「いつか、賢い誰かがどうにかするだろう」 無責任な希望の言葉が、ひどく冷たく響く。 その「いつか」は、とうの昔に灰に埋もれた。 私たちは、自らの手で火を放ちながら、 炎の中で「なぜこんなに熱いのか」と嘆く、愚かな傍観者。 焼け落ちたこの星の墓標に、言い訳は刻まれない。 すべてが燃え尽き、息絶えるその瞬間まで、 この恐ろしい無関心の夢から、目を覚まさないつもりか。

“立派な生命体だ”

  設定温度は18度、完璧にコントロールされた楽園。 室外機は今日も元気に、外の世界へ地獄の熱を吐き出す。 「今年の夏は、地球が悲鳴を上げているね」 涼しい顔で冷たいコーヒーをすすり、 ストローを紙に変えただけで、誰もが聖人の顔をする。 地球を救おう、と彼らは優しく歌う。 オーガニックの綿で編まれた、10枚目のエコバッグを抱え、 二酸化炭素を出さない最新の電気自動車でハイウェイを滑る。 そのバッテリーを満たす電力を生むために、 遠くの町で黒煙を上げる石炭の煙は、 バックミラーの霧の彼方に、綺麗さっぱり消し去って。 「ペーパーレスで、豊かな森を守ろう」 スマートな画面に踊る、緑色の美しいスローガン。 それを24時間処理するデータセンターが、 冷や汗をかくように冷水を飲み干し、電力を貪り食う。 指先ひとつで環境活動家になれる僕らの、 なんと洗練された、なにとぞ高尚な暮らしだろう。 そもそも、どこまでも傲慢なのだ。 46億年を生き抜いたこの巨大な岩石にとって、 人類の歴史など、一瞬のタチの悪い皮膚炎にすぎない。 氷河が溶けて困るのは地球ではなく、 砂漠が増えて泣くのは地球ではなく、 ただ、僕たちの「都合のいい生存圏」が消えるだけ。 「Save the Earth(地球を救え)」 美しい嘘でコーティングされた、その言葉の本音を翻訳しよう。 「Save Our Luxury(僕らの贅沢を、永遠にシステムに組み込め)」 今日も私たちは、100年後の子供たちの未来を憂い、 涙ぐみながらSNSに不満を書き込む。 そのスマートフォンに使われたレアメタルが、 どこの国の、どんな子供の手によって掘り起こされたかも知らないまま。 明日捨てるための、最新の「エコ商品」を、 私たちは今日も、笑顔で買い物カゴへ放り込む。

燃える船の特等席

  遠い海で、巨大な氷が悲鳴をあげて割れる 見知らぬ森で、無数の羽ばたきが煙に消える 私たちの「便利」と「豊かさ」の影で 声を持たない命たちが、今日また静かに終わっていく それなのに 朝になれば、淹れたての珈琲の香りが部屋を満たし 電車は一分の遅れもなくホームへ滑り込む 液晶画面の向こう側で流れる悲劇は 指先ひとつで、次のエンターテインメントへと切り替わる なぜ、私たちは平気な顔をして歩けるのだろう 空が少しずつ、その青さを変え始めているのに なぜ「今日もいい天気だ」と笑い合えるのだろう 見えないふりをしているからだろうか それとも、大きすぎる現実に怯え、 心を麻痺させることでしか生きられないからだろうか 私たちは、分厚いガラスに守られた箱庭の中で 永遠に続く「日常」という幻を、ただ消費し続けている それはまるで、炎に包まれ沈みゆく船の特等席で 優雅な音楽に合わせて、ワルツを踊り続けているように。 いつか、この足元にまで冷たい水が満ちるその日まで あるいは、窓の外から一切の鳴き声が消える日まで 私たちは目を伏せたまま、 明日も続く「当たり前」を信じて疑わないのだ。