燃える船の特等席

 遠い海で、巨大な氷が悲鳴をあげて割れる

見知らぬ森で、無数の羽ばたきが煙に消える

私たちの「便利」と「豊かさ」の影で

声を持たない命たちが、今日また静かに終わっていく

それなのに

朝になれば、淹れたての珈琲の香りが部屋を満たし

電車は一分の遅れもなくホームへ滑り込む

液晶画面の向こう側で流れる悲劇は

指先ひとつで、次のエンターテインメントへと切り替わる

なぜ、私たちは平気な顔をして歩けるのだろう

空が少しずつ、その青さを変え始めているのに

なぜ「今日もいい天気だ」と笑い合えるのだろう

見えないふりをしているからだろうか

それとも、大きすぎる現実に怯え、

心を麻痺させることでしか生きられないからだろうか

私たちは、分厚いガラスに守られた箱庭の中で

永遠に続く「日常」という幻を、ただ消費し続けている

それはまるで、炎に包まれ沈みゆく船の特等席で

優雅な音楽に合わせて、ワルツを踊り続けているように。

いつか、この足元にまで冷たい水が満ちるその日まで

あるいは、窓の外から一切の鳴き声が消える日まで

私たちは目を伏せたまま、

明日も続く「当たり前」を信じて疑わないのだ。


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