“立派な生命体だ”
設定温度は18度、完璧にコントロールされた楽園。
室外機は今日も元気に、外の世界へ地獄の熱を吐き出す。
「今年の夏は、地球が悲鳴を上げているね」
涼しい顔で冷たいコーヒーをすすり、
ストローを紙に変えただけで、誰もが聖人の顔をする。
地球を救おう、と彼らは優しく歌う。
オーガニックの綿で編まれた、10枚目のエコバッグを抱え、
二酸化炭素を出さない最新の電気自動車でハイウェイを滑る。
そのバッテリーを満たす電力を生むために、
遠くの町で黒煙を上げる石炭の煙は、
バックミラーの霧の彼方に、綺麗さっぱり消し去って。
「ペーパーレスで、豊かな森を守ろう」
スマートな画面に踊る、緑色の美しいスローガン。
それを24時間処理するデータセンターが、
冷や汗をかくように冷水を飲み干し、電力を貪り食う。
指先ひとつで環境活動家になれる僕らの、
なんと洗練された、なにとぞ高尚な暮らしだろう。
そもそも、どこまでも傲慢なのだ。
46億年を生き抜いたこの巨大な岩石にとって、
人類の歴史など、一瞬のタチの悪い皮膚炎にすぎない。
氷河が溶けて困るのは地球ではなく、
砂漠が増えて泣くのは地球ではなく、
ただ、僕たちの「都合のいい生存圏」が消えるだけ。
「Save the Earth(地球を救え)」
美しい嘘でコーティングされた、その言葉の本音を翻訳しよう。
「Save Our Luxury(僕らの贅沢を、永遠にシステムに組み込め)」
今日も私たちは、100年後の子供たちの未来を憂い、
涙ぐみながらSNSに不満を書き込む。
そのスマートフォンに使われたレアメタルが、
どこの国の、どんな子供の手によって掘り起こされたかも知らないまま。
明日捨てるための、最新の「エコ商品」を、
私たちは今日も、笑顔で買い物カゴへ放り込む。
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