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『偽善の檻』

あなたが美しいと信じているその「善意」の正体を。 路地裏で震える猫に、微笑みながら差し出されるそのフード。 それがどこから来たか、本当に見えていないのか? 工場の煙が空を汚し、巨大な船が海を渡り、その裏で名前すら与えられずに屠殺されていった無数の動物たちの血肉だ。 一つの「可愛い命」を生かすために、スピーカーの裏側で数倍の命がすり潰されている。 それを「愛護」と呼ぶのか? 笑わせないでほしい。それはただの、エゴイズムという名の残酷なエンターテインメントだ。 人類という生き物は、この地球に巣食う最悪の寄生虫だ。 自らの手を汚さない場所で「命の尊さ」を語りながら、足元では地球の骨を削り、森を焼き尽くしている。 片方を救うフリをして、もう片方を圧殺する。その矛盾に、なぜ誰も吐き気を催さない? 「餌をあげなければ、この子たちが死んでしまう」 大結構だ、ならば尋ねよう。 その猫一匹のために犠牲になった、豚や、鳥や、魚や、住処を追われた野生動物たちの命はどうなる? 彼らの死は、猫の命より軽いと誰が決めた? 人間が勝手に引いた「愛着」という名の境界線。 気に入ったものだけを囲い込み、握手を交わし合う。 それは活動でも何でもない、ただの独りよがりな趣味の押し付けだ。 目を背けるな。 私たちが立っているのは、綺麗事の絨毯ではない。 無数の死骸の上に築かれた、欺瞞のバベルの塔だ。 その歪んだ天秤を、私は絶対に「正しい」とは認めない。

『 理由も知らぬ綺麗事 』

  「地球に優しく」と奴らはのたまう 画面の向こうで、無垢な顔をして微笑む その言葉のいかがわしい心地よさに浸り 誰もが自分の傲慢さに気づかない 海が綺麗だと、無邪気に歓声をあげるがいい だが、なぜ綺麗なのかを、お前たちは何一つ知らない 砂浜に打ち寄せる波の底で どれほど無数の命が蠢(うごめ)いているかなど、考えもしない 目に見えないプランクトンの群れ 泥に潜むバクテリアどもの果てしない営み 彼らの完璧な循環があって初めて、この青が保たれている その絶対的な事実から、お前たちは目を背けている 理由も知らぬ優しさなど、ただの欺瞞だ 「綺麗だから守ろう」などと、よくも軽々しく口にできる その美しさを支える真の主役たちの名さえ 知ろうともしないくせに 本当に地球を守るということが、どういうことか教えてやろうか それは、綺麗な表面を撫で回して満足することではない 見えない場所にある「命の仕組み」を突きつけられ 己の無知と加害性に、ただ戦慄することだ お前たちは今日も、何も知らぬまま 「優しさ」という免罪符を免罪符とも思わず身にまとい ただ消費するためだけに、青い海を眺めている

終わりのない渇き

  眠らない街、ネオンの海が白々しく夜を彩る中で、 私たちは果てのない狂騒のステップを踏み続ける。 擦り切れるほどに数え上げられるのは、虚ろな紙幣の束。 積み上げられた黄金のコインが放つ冷たい輝きの陰で、 声なき誰かの痛みが、静かな一滴の涙となってこぼれ落ちる。 すべてを手に入れようとするその手のひらは、 なぜこれほどまでに重く、そして空虚なのだろうか。 「もっと、さらに多くを」 その見えない呪文に突き動かされ、私たちは世界を搾取し尽くす。 天を突く無数の煙突から吐き出される灰色の息が、 かつて清らかだった空の青を、残酷なまでに塗り潰していく。 赤く燃え盛る森の悲鳴、焼け焦げた大地の匂い。 母なる自然が流す血を啜り、命の根源すらも欲望の炉にくべながら、 私たちは自らの首を絞めていることに気づかないふりをしている。 ガラスの壁の向こうでは、休むことを知らない無機質な機械の腕が、 冷徹なリズムで次々と「豊かさの象徴」を生産し続ける。 無数の光る画面、とめどなく流れる株価の数字、溢れ返る情報。 それらに魅入られた私たちの瞳には、もはや本当の空の広さすら映らない。 モノの洪水に溺れながら、心は常に飢え、ひび割れている。 便利さと引き換えに私たちが差し出したのは、人間としての確かな温度だった。 "Driven by greed, we bleed the world dry." (貪欲さに突き動かされ、私たちは世界を搾取し尽くす) あふれる富も、至上の技術も、決して魂の渇きを潤すことはない。 どこまで登り詰めれば、私たちは満たされるのか。 すべてを灰に変え、この星が完全に枯れ果てるその日まで、 欲望という名の暴走列車から降りることはできないのか。 「いつになれば、私たちは立ち止まるのか」 その悲痛な問いかけすらも、都会の喧騒とサイレンの音に掻き消されていく。 だが、破滅への足音に耳を塞ぐ私たちの瞳の奥深くに、 まだ、わずかに残されたものがあるはずだ。 それは、瑞々しい一枚の小さな緑の葉と、そこに宿る清らかな一滴の雫。 果てしない欲望の果て、世界の終わりに立ちすくむ時、 私たちを救うのは、積み上げた紙幣でも、冷たい機械でもない。 その脆く美しい生命の瞬きに畏敬の念を抱き、再び世界を愛すること。...

愛の形

  温かな部屋で、丸くなる背中を撫でるとき 私たちは 優しい神様になる。 ガラス越しに、愛嬌を振りまく命を見つめるとき 私たちは 愛に溢れた保護者になる。 手の届く場所にある命。 目が合い、声が聞こえ、私たちにどこか似た命。 犬の温もり、猫の喉鳴り、檻の中で飼い慣らされた野生。 私たちはそれらに名前を与え、愛を注ぎ、守ろうと涙を流す。 けれど、視線を足元のさらに深くへ、 あるいは、コンクリートの壁のずっと向こうへ向けてみよう。 光の届かない冷たい海の底で、 泥を這い、息を潜める奇妙な形の命たち。 人間の踏み入らぬ深い森の奥で、 ひっそりと生まれ、静かに朽ちていく名もなき命たち。 彼らには、愛らしい瞳がない。 私たちを慕う、分かりやすい鳴き声もない。 だから、私たちの手はそこまで伸びない。 「見えないもの」は、存在しないものとして扱われ、 救いのリストの、いつも一番下に書き込まれる。 なぜ私たちは、自分に似たもの、耳障りの良いものだけを愛するのだろうか。 なぜ私たちは、目の届く範囲だけを「世界」と呼ぶのだろうか。 それはきっと、見えない痛みを想像するには、 私たちの心が、あまりにも不器用で、狭いからかもしれない。 「かわいい」という感情のフィルターを通さなければ、 命の重さを量ることができないからかもしれない。 しかし、気づいてほしい。 私たちが手を差し伸べない暗闇の中にも、 確かに脈打つ心臓があることを。 名前を持たない無数の彼らの呼吸が、 この地球という星の生態系を、根底から支えていることを。 愛らしさだけで、命に順位をつけるのをやめよう。 目の前にある小さな世界だけでなく、世界の果ての暗闇を想像しよう。 見えないものへと思いを馳せ、そこに生きる命の尊厳を認めたとき、 人類は初めて、本当の意味での「優しさ」を知るのだから。

お前はクソだ

  1秒の快適、永遠の代償 カチ、コチ、と刻む秒針。 冷えた部屋で、僕らは息をつく。 外の猛暑をシャットアウトして、 1分1秒、この「快適」を死守するために。 1秒たりとも不快には耐えられない。 1度たりとも汗はかきたくない。 快適な暮らしという透明な箱庭を、 1秒たりとも崩したくはないのだ。 その指先がスイッチを押すたび、 北の氷床が静かに削れ、 遠い森が激しい炎に包まれても、 僕らはリモコンを手放さない。 明日を売り払い、今日を冷やす。 未来の100年を殺して、 いまの1分間を甘やかす。 青い星の皮膚を切り刻み、 差し出した代償の上に成り立つ、 非の打ち所もない、完璧な日常。 なんと小さく、 なんと浅ましく、 ——なんと愚かなのだろう。 破滅へと向かうカウントダウンの中で、 僕らは今日も、冷房の効いた部屋で 最高に快適な終わりを待っている。

人類

  手の中の小さな命には 涙を流せるのに 見上げる空のひずみには どうして 僕らは目を閉じるのだろう。 遠い祖先から受け継いだ このちっぽけな 脳の器は 「目の前の悲鳴」を聴くために作られ 「見えない世界の危機」を 測るようにはできていない。 水槽の底で 震えるイルカ 傷ついた一頭の 頼りない背中 そこには 顔があり、物語があり 今すぐ差し伸べられる 手のひらがある。 けれど 押し寄せる熱波も、膨らむ数字も、 あまりに巨大で、あまりに透明で。 僕らの心は その大きさに追いつけず ただ 立ち尽くすことしかできない。 なにより、恐ろしいのだ。 その大きな鏡に 映る自分が。 小さな命を救うとき 僕らは 優しい「ヒーロー」になれる。 差し出したぬくもりの分だけ 「正しい自分」を 抱きしめることができる。 だけど 燃える地球と向き合うとき 僕らは 逃れようのない「加害者」になる。 走らせる車、灯すあかり、暮らす部屋、 そのすべてが 静かな破壊の引き金だと 知ってしまうから。 「自分が悪者だ」という 痛みに耐えかねて 僕らは今日も、都合のいい目隠しをする。 大きな罪から 目を背けるために 小さな善意という名の 隠れ家に逃げ込んで。 この矛盾こそが、人間の業(ごう)。 愛おしくも どこまでも不器用な、僕らの姿。